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カーボカウントな日々

血糖値を上げるのは炭水化物(カーボ)です。炭水化物さえ摂らなければ血糖値はほとんど上がりません。 今、世界の糖尿病治療は、食事の炭水化物をコントロールするカーボカウンティングが主流となっています。

タンパク質は呼び水になるか?

2008 - 10/02 [Thu] - 16:52

インスリンの事前発動という記事を書いたとき、杉本先生に「タンパク質のインスリン刺激効果を使ってはどうか」というアドバイスをいただきました。

タンパク質もゆっくりと時間をかけてブドウ糖に変わるのは知っていましたし、その糖がインスリンの分泌を促がすのはわかります。しかし、タンパク質(アミノ酸)自体がインスリンの分泌を刺激するというのは知りませんでした。

ネットでいろいろ検索すると、順天堂大学の河盛先生のこんな説にたどり着きました。

人の静脈にアルギニン(アミノ酸の一種)を注射すると、確かにインスリンは分泌されますが、同時にグルカゴンも刺激されるというのです。グルカゴンが肝臓の糖新生を促し、そこから放出された糖をインスリンが処理するというわけです。これはほぼ同時に行われるので、血糖値には影響しないようです。

言ってみれば、アミノ酸が吸収されたとき、肝臓にあった糖を筋肉や脂肪細胞にほぼ瞬間的に移すという謎の儀式が行われていることになります。肉を食べるという善行に対して、体は速攻で筋肉にご褒美をあげるということなのかも知れません。芸をしたアシカへのご褒美は、ショーのあとじゃなくその場でってことなんでしょう。

まあ、これが本当だとしたら、1型糖尿病患者がタンパク質でもかなり血糖値が上がるというのも説明がつきます。1型患者からはインスリンが分泌されないので、グルカゴンによる糖の新生のみが起こっていると考えられるからです。

タンパク質のインスリン刺激効果は、グルカゴンとワンセットだとしたら、血糖降下効果はあまり期待できないかもしれませんが、少なくともインスリン生産工場のラインをあらかじめ始動しておく効果はあるような気がします。

とうことで実験です。

呼び水としてのタンパク質は日本ハムから出た糖質ゼロのロースハムです。1パック4枚でタンパク質6.7g。呼び水としてはちょっと少ないかな。

ハム

実験食は、先日「デンプンvs乳糖&果糖」でやったマーガリントーストです。あの時は呼び水なしだったので、比較しやすいと思います。

マーガリントースト

まず、糖質ゼロのロースハム35gを食べて1時間休憩。その後マーガリントーストをブラックコーヒーと共に食しました。血糖値の推移はこんな感じ。

血糖値推移

ハムを食べて1時間で、血糖値は10mg/dl上がりました。炭水化物はゼロ、脂質も1gなので、3.5gのタンパク質が血糖上昇の原因と考えていいと思います。

さて、この3.5gのタンパク質に刺激されたベータ細胞が、食パンに含まれる45gの炭水化物をどう処理してくれるか、期待してその後の推移を見守りましたが、劇的な効果は見られませんでした。前回の呼び水なしの実験結果と比較したグラフがこれ。

血糖値推移グラフ

この実験だけをもって、タンパク質に呼び水効果はないと結論付けることはできないと思います。もしかしたら、ハム4枚分のタンパク質ではインスリンの分泌を十分刺激することはできないのかもしれません。

しかし、だからといって呼び水だけのために、ハムを2パックも3パックも食べる気にはなりません。炭水化物による呼び水なら、クッキー2潤オ3枚で十分効果は見込めるのですから。

今度、時間があったら、同じ条件で炭水化物による呼び水実験をやってみたいと思います。





 コメント

蛋白質のインスリン分泌刺激作用

とても有意義な実験をなさっておられますね~。
本当に素晴らしいと思います。

まずは雑談から入りますが・・・
来年いつかの本の出版に関わっているのですが、その中でカーボカウントQ&Aという本の中で「参考になるWebサイトがあれば教えてください」というコーナーを担当していますので、ぜひこのサイトを推薦したいと思います。
私はカーボの血糖値への影響を一番知らないのは、実はいわゆる専門家ではないか?と最近思います。かれらは経口薬治療ないしは無投薬治療中の患者の血糖値を丹念にみません。血糖測定器メーカーの方と話していると、「食べ物によっては、私もときどき200を超えますよ」という声を聞きます。丹念に調べれば、健常者と思っている人の中にも食後高血糖を呈している人が実はたくさんいて、そうした現実を知らない専門家が「食後高血糖の危険性」を声高々に主張しているのかも知れません。

さて、本論です。
私が紹介した論文は「炭水化物単独を食べたとき」と「炭水化物と蛋白質を同時に食べたとき」で、インスリン分泌を調べて、同時に食べると2倍以上のインスリン分泌があることを示したものです。
だから、今回のような実験では、食パンとハムを同時に食べる場合と食パンだけでの比較が適当かと思います。蛋白質は単独ではほとんどインスリン分泌を刺激しません!!

インスリン分泌に関する実験は、インクレチンの発展の歴史を考えても分かるとおり、静脈注射ではなくて、口から食べた実験でなければ、きちんとした結論が言えないのではないかと思いますよ。
ご存じの通り、ブドウ糖負荷試験を経口負荷で行うと、インスリン分泌が強く刺激されるのに、静脈投与ではまったくインスリン分泌刺激が起こらなかったことから、インクレチンという物質が注目されるようになったことは有名ですね。

ご迷惑かも知れませんが、これらのデータを、ぜひ次回出版する本の中で、使わせていただけたら・・と思っています。
今後、チャンスがあれば、診断されたばかりの予備軍~軽症2型DM患者さんを対象に、「食品交換表のみの指導」「カーボカウントのみの指導」で1~2年間比較研究する試験を行えたら・・と思っています。

以上、大変長くなってしまいましたが、益々のご研究?の発展を期待しています。

「静脈注射の実験」についての補足説明

編集機能の使い方が分からないので、追記します。

文中で「静脈注射ではなく、口から食べる実験」と書きました。
これはアルギニンの静脈投与のような実験系ではなくて、実際に蛋白質を食して行う実験でないと、インスリン分泌刺激に関する実験としては不十分ではないか?という意味です。
やはり「食べてなんぼ」ということをリサーチしていくことが大切かと思います。

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このコメントは管理人のみ閲覧できます

杉本先生

ご丁寧なコメントありがとうございます。
まず、サイト紹介とデータ利用の件、快諾いたします。
このサイトが、少しでも多くの糖尿病患者の役に立つなら、こんなに嬉しいことはありません。

あと、炭水化物と蛋白質を同時に食べた場合、炭水化物単独に比べて2倍のインスリン分泌があったという件は、糖尿病患者として確かに思い当たる点はあります。

「カーボ45g記録会」という記事の朝マックの血糖値推移がまさにこれかなと思えるのですがどうでしょうか? 私は朝マックの血糖値が上がらないのは、大量の蛋白質と脂質のせいで胃での滞在時間が長くなったため、インスリンの分泌が間に合ったからだと思っていたのですが、確かにそれだけでは説明できないような気もします。

先日あるサイトに「ダイエットコーラを口に含んだだけで40秒後にはインスリンの分泌量が増えていた」というデータがありました。
http://orthomolecule.jugem.jp/?eid=219
もしかしたら十二指腸のK細胞みたいなセンサーが、舌とか胃とかいろんなところにまだまだあるのかもしれませんね。で、インスリンの分泌遅延はこのセンサーの劣化から起こるとか。単なる素人の想像ですけどね。(汗)

> 診断されたばかりの予備軍~軽症2型DM患者さんを対象に、「食品交換表のみの指導」「カーボカウントのみの指導」で1~2年間比較研究する試験を行えたら・・

個人的には非常に興味があります。ぜひお願いします。

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プロフィール

カステーラ

Author:カステーラ
東京都在住、61歳。
2007年2月、糖尿病発症。
現在、服薬なしでカーボカウンティングという食事療法を実践中。
「カーボカウントってなに?」という方は、まずこちらから。

ヘモグロビンA1c(体重・BMI)推移
2007年2月:9.3%(64kg・22.9)
2007年3月:7.5%(62kg・22.2)
2007年4月:6.0%(60kg・21.5)
2007年5月:5.3%(58kg・20.8)
2007年6月:4.8%(57kg・20.4)
2007年7月:5.1%(57kg・20.4)
2007年8月:4.8%(57kg・20.4)
2007年9月:5.0%(58kg・20.8)
2007年10月:5.0%(57kg・20.4)
2008年1月:5.3%(56kg・20.1)
2008年5月:5.2%(56kg・20.1)
2008年7月:5.3%(55kg・19.7)
2008年10月:5.2%(58kg・20.8)
2009年1月:5.2%(58kg・20.8)
2010年7月:5.4%(58kg・20.8)





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