アトキンスダイエットの効果
久しぶりにアメリカ糖尿病協会(ADA)のサイトからの引用です。 低炭水化物ダイエットは2型糖尿病を改善する
アトキンス式ダイエットなどで知られる低炭水化物食は、肥満のある2型糖尿病患者の血糖値を改善するとの研究結果が明らかになった。
医学雑誌の「Nutrition and Metabolism」によると、この食事療法によって薬の減量や離脱に至った患者も多いという。
炭水化物の制限は糖尿病食において最も重要なポイントである。炭水化物を極端に制限すると、体はタンパク質をエネルギー源とし、それによってケトン体が産生されるために、ケトン体ダイエットと呼ばれる。もう一つの方法は、血糖値の上昇が緩やかな低GI食品を用いた、カロリー制限食である。
デューク大学メディカルセンターのエリック・ウェストマン博士の研究グループは、これら二つの食事法の効果を比較した。被験者となった84名は肥満のある2型糖尿病患者。患者らは「1日20g以下の低炭水化物食」と「低GIによるカロリー制限食」の2つのグループにランダムに振り分けられ、24週(約6か月)にわたって実験が行われた。低炭水化物グループにはカロリー制限はない。
低炭水化物食グループは、血糖値の長期コントロールを示すヘモグロビンA1c値において、カロリー制限グループより大きな改善が見られた。
低炭水化物グループは、体重の減少と善玉のHDLコレステロールの増加においても、改善効果が高かった。
また、低炭水化物グループでは95.2%が薬の減量や離脱ができたのに対して、カロリー制限グループでは62.1%であった。
低炭水化物食による生活様式の改善は、2型糖尿病の改善に効果がある、と研究グループは結論付けている。
アメリカあたりでは、糖尿病患者が炭水化物の量をコントロールするというのは、もはや議論の余地のない大前提であり、そのコントロールをどういう方法でどの程度までやるか、というところに論点が移っているような気がします。
炭水化物のコントロール法の一つは、食品のGI値に気をつけながら全体にカロリーを控えるというもの。もう一つはカロリーのことは考えずに、炭水化物だけをできるだけ控えるというもの。今回はこの二つの方法を比較したもののようです。
この実験で行われた低炭水化物食は1日20g以下というかなり極端な炭水化物制限です。また、カロリー制限は体重の維持に必要なカロリーより500kcal低い値に設定したようです。私自身に当てはまると1日1300~1500kcalといったところでしょうか。
1日20gのカーボか、1日1300kcalのカロリーか。どっちも辛いところですが、これはあくまで体重を落とし、血糖値も改善しようという食事法。半年間、これでしのいで体重と血糖値が安定したら、1日1800kcal、カーボ150g程度のゆるゆる食事制限で大丈夫です。あくまで私の場合ですが。
アメリカ糖尿病協会の記事
Nutrition and Metabolismの記事
患者の力
病院の待合室でのこと、糖尿病と思われる初老の男性が、たまたま隣に座った患者にこんなことを話してました。
「わたしなんか、肉とか油物はここ10年くらいほとんど食べてないですよ」
そんなこと、いったい誰に教わったのでしょう?
また、ある糖尿病患者のブログを見ていたら、1日の食事が載っていました。それはこんな内容でした。
【朝】ご飯、蕎麦
【昼】雑炊、スパゲティ
【夜】うどん、リンゴ
見事に炭水化物オンリーです。医者はそのことを知っているのでしょうか。
さらに、ネット上のあるコミュニティではベテラン糖尿病患者がこんな発言をしていました。
「空腹が耐えられなくなった時は、薄いお粥を腹いっぱい食べてしのぎます」
私の知る限り、薄いお粥なんて砂糖水並みに血糖値を上げるのに。
非常に残念なことですが、これが日本の糖尿病患者の多くが信じる、「正しい糖尿病食」なのです。どの患者もきちんと病院に通い、医者の指導も受けているはずなのに、なんでこんなデタラメがまかり通ってしまうのでしょう。
それは、患者に食事を指導する医者が、なんにも判ってないからです。私にはそうとしか思えません。
日本のたいていの医者は、糖尿病患者にカロリー制限を指導します。身長から標準体重を割り出し、それに25~30をかけた数字がその人の摂取カロリーです。私は1520kcalに抑えるように言われました。指導はただそれだけ。食品交換表の話もありませんでした。
カロリー制限に加えて、砂糖と油物は控えるようにという指導をする医者もかなり多いようです。しかし、砂糖がダメでご飯はOKの意味が私には判りません。どちらも最終的にはブドウ糖になって血糖値を上げるのですから。
また、油の摂取を控えれば控えるほど、その分カロリーは炭水化物に依存することになります。炭水化物は血糖値を上げ、中性脂肪を増やし、最終的には内臓脂肪として蓄えられ、それがさらに糖尿病を悪化させるのです。
私は糖尿病になってから、ノンオイルドレッシングを使ったことがありません。いつもオリーブ油の入ったイタリアンドレッシングを使っています。また、野菜炒めもキャノーラ油をたっぷりと使っています。体にいい一価不飽和脂肪酸を摂るこことで、炭水化物の摂取を減らせるからです。
諸悪の根源は、「高カロリー=高血糖」という誤解です。恐らく、日本の内科医のほとんどは、カロリーが血糖値を上げると思っているのではないでしょうか。しかし、ステーキやフライドチキンなど、いくら食べても血糖値はほとんど上がりません。ところが、おにぎり1個、パン1枚で血糖値はびっくりするほど上がるのです。
今、世界の先進国で糖尿病患者に炭水化物の制限を指導しない国は、ほとんどないといっていいでしょう。アメリカでも、イギリスでも、フランスでも、ドイツでも、スペインでも、糖尿病患者がまず最初に言われるのはカロリー制限ではなく、炭水化物の制限なのです。
ではなぜ、日本だけがこんなことになっているのでしょう。なぜ、日本の糖尿病患者だけが、炭水化物まみれの食生活を強いられなければならないのでしょう。その責任はすべて、日本糖尿病学会にあると私は思っています。
糖尿病を専門に研究している医者が、炭水化物と血糖値、炭水化物と中性脂肪、炭水化物と肥満の関係を知らないはずがありません。低炭水化物食が糖尿病を改善するといういくつもの研究データを目にしないはずがありません。にもかかわらず従来のやり方を変えようとしないのは、きっと何か思惑があるのでしょう。それが、利害なのか単なる面子なのか、私には判りませんが。
学会のこのような、よく言えば怠慢、悪く言えば横暴がまかり通ってしまう原因のひとつに、日本の患者が大人し過ぎるというのがあるような気がしてなりません。
情報の波間を漂う糖尿病患者の多くは、カーボカウントという、カロリーではなく炭水化物に注目した食事療法があることを知り、やがてそれが非常に効果的であることを、身を持って体験することになります。しかし、残念ながら多くの患者は、そのことを医師に隠してしまうのです。
日本人の場合、医師は先生であり、絶対服従すべき存在であるという意識がまだまだあるのかもしれません。しかし本来、医師と患者は対等であるはずです。治療方針は医師と患者の双方が合意した上で決められなくてはならないはずです。医師は患者の納得できないやり方を押し付けるべきではないし、患者もまた、納得できないやりかたに黙って従うべきではありません。
患者はまず医師に対して、「カーボカウントでやりたい」あるいは「糖質制限でやりたい」ということをはっきり伝えるべきです。「カーボカウントってなに?」っていう医師にはしっかり勉強してもらいましょう。その上で、「カーボカウントには賛同できない」、「カーボカウントを指導する自信はない」という医師には、カルテの写しをもらい、病院を変えるしかありません。
カロリー制限を指導する病院は閑古鳥が鳴き、カーボカウントでいく病院は活況を呈すということになれば、医師も変わらざるを得ないはずです。
とにかく大事なのは、患者がはっきりと声を出して、自らの意思を医療側に伝えていくことです。そして、患者もまた治療方針の決定にかかわっていくことです。幸か不幸か糖尿病の場合、治療の主体は医師ではなく患者にあります。患者自身が戦略を立て、患者自身が努力することで、結果を出すことが十分可能な病気なのです。
「1990年代の頃から、世界の糖尿病治療の流れはカーボカウントにあったのに、日本の糖尿病学会だけがカロリー制限主義に固執したため、私は失わなくていい視力と足と腎機能をを失った」という声がいずれ出てくるのではないかと私は思っています。それは患者にとって不幸なことですし、医師にとっても不幸なことです。
そうならないためにも、糖尿病学会は一刻も早く、カーボカウントというオプションを認めるべきですし、患者側もその決定を促がすための行動を起こしていかなければならないのではないでしょうか。そのひとつとして、このブログも何らかの力になれたらと思っています。
ためしてガッテンの嘘
NHKの情報番組『ためしてガッテン』を見ました。今回のテーマは「低カロリーダイエット・失敗と成功の分岐点」。同じカロリー摂取でも、痩せやすい食事と痩せにくい食事があるのだとか。
番組の論点はこうです。
・同じカロリーでも糖質(炭水化物)が少ないと痩せにくい。
・糖質の理想的なバランスは60%。
・糖質が不足すると脳が低血糖になり飢餓と判断する。
・「飢餓に備えろ」スイッチが入ると代謝が落ち痩せにくくなる。
番組はいきなり実験から始まります。
女子大生を2つのグループに分け、同じカロリーの食事をしてもらいます。カロリーは同じでもBグループの糖質量はAグループの2倍だそうです。
食事のあと、それぞれのグループに箸で豆を並べるという集中力が必要な作業をしてもらいます。糖質量の多かったBグループの方が作業効率が良かったという結果になり、番組は「食事の糖質量はいかに重要か」という結論に力づくで持っていきました。
それぞれのグループの食後血糖値も測っていましたが、たしかに糖質量の多いグループの血糖値は140mg/dlほど、糖質量の少ないグループの血糖値は120mg/dlほどでした。しかし、これをもって糖質を取らないと頭が働かないというのはあまりにも短絡的です。人間の脳というのは85mg/dlぐらいの血糖値で十分本来の働きをするようにできているのです。
この二つのグループの作業効率の違いを説明するとすれば、高脂肪・高タンパク食は消化に時間がかかるため血液の多くが内臓に集まり、脳の働きが鈍ったというだけのことだと思います。
番組ではたっぷり糖質を取ることが痩せやすいダイエットのコツだと何度も強調しながら、実際に痩せにくい女子大生の食事を見ると、菓子パンだけとかおにぎりだけというような、極端に糖質の多い食事になっていることを指摘しています。糖質の多い食事はすぐに血糖値が上がるものの、下がるのも速いため、脳がエネルギー不足を感じて節約モードになるというのがその説明でしたが、糖質を抑えてはダメという最初の結論とはまったく逆になっています。
番組はさらに、「飢餓に備えろ」のスイッチをオンにしないための食事法を紹介します。ある栄養クリニックの指導によるもので、すでに何百人もの人がこのやり方で無理なく痩せてきたというものです。
・糖質はご飯を子供茶碗に一杯か、8枚切りパン1枚、あるいは茹で麺半玉から一つを選ぶ。
・果物か芋類の半分量から一つ選ぶ。
・タンパク質は牛乳(120ml)、卵(1個)、肉(50g)、豆腐(1/4丁)などの中から二つ選ぶ。
・油は大匙半分。
・野菜とキノコは好きなだけ。
というように糖質、脂質、タンパク質の中から決められた点数を選ぶという、食品交換表をさらにシンプルにしたようなもの。そのやり方に従って、ご飯100g、オレンジ半分、卵1個、赤身肉50g、油大さじ半分という食事の栄養バランスを調べてみました。
糖質 | 47g | 40% |
脂質 | 24g | 45% |
タンパク質 | 18g | 15% |
総カロリー | 476kcal | 100% |
糖質たっぷりどころか、立派な低糖質食になっているではありませんか。
また番組では太りにくい食べ方のコツとして、汁物やおかずである程度お腹を満たしてから、炭水化物を食べることを勧めていました。そうすると、糖質の吸収がゆるやかになり、満腹感が持続するとのことですが、これなどはまさに、低インスリンダイエット、ローカーボダイエットの発想そのものです。
カロリーを制限しながら体脂肪の減らなかった女子大生の糖質比が約6割だったといい、無理なく減量できるとお勧めの食事の糖質比が約4割しかないのに、なぜ理想の糖質比が6割ということになってしまうのでしょう。
あの番組によって、間違った糖質礼讃主義が蔓延らないことを祈るばかりです。
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