A1cからeAGへ
どうやらアメリカでは、ヘモグロビンA1cの値を推定平均血糖値(estimated Average Glucose)に置き換えて患者に伝えるという方法が、本格的に始まろうとしているようです。
これまでは「あなたのA1cは9.3%ですよ」と言っていたのを、「あなたのeAGは220mg/dlですよ」と言うようになるわけです。←これ私の発症時の数値ね。
本来は空腹時値も、食後2時間値も、過去2ヶ月の平均値も、同じ単位の方が分かりやすいはずですが、患者歴の長い人はいきなり平均150でしたと言われてもピンとこないでしょうね。特に、血糖自己測定(SMBG)の習慣がない人は。
ちなみに、糖尿病患者の目標とされるA1c6.5%は、eAGでいうと140mg/dlになります。基準値とされる5.8%は120mg/dl。A1c5.0%でeAGはようやく2桁になります。
ヘモグロビンA1cの値を、eAG(推定平均血糖値)に置き換えてくれるのがこちらのサイト。
私の直近のヘモ値、5.2%を入力すると、103mg/dlという平均血糖値がはじき出されました。朝の空腹時血糖値が大体110台なので、平均はもうちょっと高いのかなという気もしますが、静脈血と毛細血管血の違いもあるし、夕食前や就寝前はたいてい2桁なので、平均すればそんなものなのかもしれません。あ、あとアメリカのヘモ値は、日本よりちょっと高いんだったかな。
それにしてもこのeAG(推定平均血糖値)、日本にもいずれ導入されるんでしょうか。私なんかは慣れればこちらの方がはるかに便利だと思うんだけど、意外と一番抵抗しそうなのが糖尿病専門医の、特に大御所と呼ばれる方々なのかもしれません。なにしろ、カーボカウントさえまだ認めようとしない、超頑固者集団ですから。
平均血糖値とヘモグロビンA1c
普段測る血糖値はそれほど高くないのに、ヘモグロビンA1cはなかなか下がらないという悩みを聴くことは良くあります。
たとえば、空腹時血糖値はたいてい2桁、食後のピークもほとんど140を超えないのに、ヘモグロビンA1cはどうしても6%を切れないというのです。血糖値だけをみればまったく何の問題も無いので、私なんかは気にすることはないと思うのですが、本人にとってみればいろいろ不安に思ってしますのでしょう。
もしかして、寝てる間にものすごい高血糖になってるんじゃないかと、血糖値の割にたんぱく質が糖化されやすいって事は、合併症にもなりやすいんじゃないかとか。
そもそも、ヘモグロビンA1cが過去2ヶ月ほどの血糖値の平均を表すとは言っても、2ヶ月間にわたって本当の意味での平均血糖値を調べた人などまずいないはずです。私は以前、起きてから寝るまでの血糖値を1時間おきに測り続けたことがありましたが…。
平均血糖値とヘモグロビンA1cの関連を調べたデータがとこかにないかと探したら、去年の8月「Diabetes Care」に面白い研究結果がありました。
研究調査の対象となったのは、1型患者268人、2型患者159人、健常者80人の合計507人。国は10カ国に及びます。
被験者まず、5分おきに1日288回の血糖測定を2日間にわたって行います。それを1ヶ月ごとに3ヶ月間続けます。さらに、1日7回の指先からの血糖測定を、週に最低3日行います。
3ヵ月後、各自のヘモグロビンA1cを測定し、それまでの血糖値の平均と比べるというものです。
その結果をグラフに落とし込んだのが、下の図です。ぱっと見、確かに平均血糖値とヘモグロビンA1cは綺麗な相関関係を描いています。 
しかし、図を良く見ると、たとえばA1cの基準値といわれる5.8%辺りでも、下は90mg/dlから上は160mg/dlぐらいまで、けっこうばらつきがあることが分かります。
血糖値の平均が90といえば、空腹時は80程度、食後でも瞬間的に140超えるかどうかって感じじゃないでしょうか。一方、平均160mg/dlというと、空腹時120以上、食後は常に200超って感じだと思います。そんな二人が同じ5・8%っていいうのも、ちょっと不公平ですね。
知りたいのは、平均が90だろうと160だろうと、合併症のリスクの指標となるのは、あくまでもヘモグロビンの糖化率(=HbA1c)なのか、それとも実際の平均血糖値なのかという点ですが、それはまだ結論が出ていないのでしょう。
私としては、実際の血糖値の方が重要だし、単に平均ではなくその推移の仕方のほうがさらに重要だという気はしますが。
因みにこの実験から導き出された数式は「平均血糖値=28.7 × A1C − 46.7」ということらしいです。
実際の計算はこんな感じです。
| HbA1c | 平均血糖値 |
| 5% | 97 |
| 6% | 126 |
| 7% | 154 |
| 8% | 183 |
| 9% | 212 |
| 10% | 240 |
| 11% | 269 |
| 12% | 298 |
http://care.diabetesjournals.org/content/31/8/1473.abstract
砂糖に換算すると
最近、けっこう話題になってるサイトがこれ。1日に10万件のアクセスがあったとか。
http://www.sugarstacks.com/
ふだん何気なく口にしている食べ物に、どの程度の砂糖が含まれているかを視覚的に訴えようってことらしいけど、併設されたブログをみると、どうもあちこちから非難やら間違いの指摘をかなり受けているらしいです。
サイトの管理者によると、彼らは製品のパッケージやメーカーのホームページから成分表を調べ、そこに書かれた「砂糖」「コーンシロップ(ブドウ糖果糖液糖)」「果糖」「蜂蜜」などの成分を砂糖に換算して表示したとしています。つまり、舌に甘いと感じる単糖類、二糖類あたりのみを砂糖として表示しているのです。
たとえば、彼らは『オレオ』というクッキーの一食分(34g)の砂糖を14gとしています。しかし成分表を見ると、『オレオ』にはトータルで25gの炭水化物が含まれてることになっています。つまり、14gの砂糖のほかに、食物繊維1gを除いた、小麦粉由来のデンプンが10g含まれているのです。
ところがこのデンプン、体の中でどんどん分解され、最終的にはブドウ糖として小腸から吸収されるので、体にとっては糖分となんら変わりないのです。いや、それどころか、砂糖はブドウ糖と果糖が半々、一方、デンプンはほとんどがブドウ糖になりますから、血糖値への影響という意味では、デンプンのほうが大きいのです。実際、食品の血糖値への影響を示すGI(グリセミックインデックス)でも、白パンは100、砂糖は60ということになっています。
アメリカ糖尿病協会によるカーボカウントの指導でも、砂糖はデンプンなど他の炭水化物と区別していません。砂糖で摂ろうが、パンで摂ろうが、玄米で摂ろうが、炭水化物は炭水化物。摂取量に応じて血糖値は上がるという考え方です。
ということで、「Sugar Stacks」のパクリですが、ふだん私達が食べているものには、砂糖換算でどの程度の炭水化物が含まれているかを写真にしてみました。(角砂糖1個は砂糖3.3gです)
■食パン(6枚切り)/炭水化物:30.7g
■白米飯(150g)/炭水化物:55.6g
■素うどん(1食)/炭水化物:56.1g
とりあえず、今日は素うどんの血糖推移を計測したので、日を改めて角砂糖17個の血糖値推移を調べてみたいと思います。結果はまたいずれ。
そうそう、杉本先生からの宿題もこの機会にやっちゃいます。
(注:比較はあくまで食物繊維を含んだ炭水化物量です。比較した両者がまったく同じように血糖値を上げるとは限りません)
オバマ大統領と糖尿病
ここ数日のニュースによると、アメリカのオバマ米大統領はヒト胚性幹細胞(ES細胞)研究助成解禁の大統領令に署名したそうです。
ES細胞とは、人のどんな細胞にもなりうる細胞のことで、通常、受精卵から得られます。この研究開発が生命の倫理に反するということで、共和党のブッシュ大統領は反対してきたのですが、民主党のオバマ大統領は、逆にアメリカの国益に合致すると判断したのでしょう。
ES細胞はどんな細胞にもなりうるのですから、当然、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞を作り出すことも可能です。これによって、糖尿病の完治も夢ではなくなるわけですから、私たち糖尿病患者の期待も膨らむばかりです。
マウスレベルの実験では、人の幹細胞を糖尿病のマウスに注入したところ、インスリンの分泌能が回復しただけでなく、障害をきたしていた腎臓の機能も回復したそうです。注入されたのはヒト幹細胞ですが、もちろん分泌されるようになったのはマウスのインスリンです。
http://www.healthdayjapan.com/index.php?option=com_content&task=view&id=537
ただし、このうような方法でβ細胞が回復し、耐糖能もまったく正常になったとしても、昔のような運動不足と過食を繰り返せば、再びβ細胞はダメージを受け、いつか来た糖尿病への道を再び歩むことになるわけです。
たとえ将来的に、糖尿病が完治するようになったとしても、どの道、清く正しい生活は続けなくてはいけないということですね。
糖尿病と十二指腸
ちょっと前の夕刊フジに面白い記事がありました。
超肥満者に対して行われる胃のバイパス手術で、ほとんどの人の糖尿病が治ってしまうというのです。
世界で年間数万件行われている症例で80%は術後、糖尿病の治療が不要になっているそうです。日本の減量手術の第一人者である笠間和典氏によると、同氏がこの6年間に行ったBMI32以上の糖尿病患者35人に対する胃バイパス手術では、治癒率100%だったとか。
どうやらポイントは食物が十二指腸を通らないことのようです。
同様の記事がないかとネット内を探ったら、You-Tubeにこんな動画がありました。
この番組に登場した8人も、全員が術後、糖尿病は完治したといいます。
執刀医によると、糖尿病が完治した患者を10〜15年経過観察をしても、再発したケースは見当たらないとか。まさに完治といっていい状態だと思います。
肥満の解消が糖尿病の改善に役立つことは誰でも知っています。しかし、彼らはみな術後数日で糖尿病が治ってしまうというのです。この時点で、肥満はほとんど解消されていません。
ラットによる実験でも、十二指腸のバイパス手術をすると糖尿病の症状はなくなってしまい、再び十二指腸をつなげるとぶり返すことが確認されています。
十二指腸といえば、ここを糖質の食べ物が通過するとき、インクレチンというホルモンがでて、すい臓がインスリン分泌の準備を始めることが知られています。もしかしたら、その辺の機構がかかわっているのかもしれません。
事実、この手術を行うとインクレチンの一種であるであるGLP-1が増加するそうですが、糖質を感知するセンサーであるはずの十二指腸を取ってしまうわけですから、効果は逆になってしまいそうなものですが、そうではないところが不思議です。
どちらにしても、この十二指腸の不思議を解明するあたりに、糖尿病完治の手がかりがありそうな気はします。まあ、完治するからといっても、十二指腸を取ってしまう勇気は今のところありませんが。
アトキンスダイエットの効果
久しぶりにアメリカ糖尿病協会(ADA)のサイトからの引用です。 低炭水化物ダイエットは2型糖尿病を改善する
アトキンス式ダイエットなどで知られる低炭水化物食は、肥満のある2型糖尿病患者の血糖値を改善するとの研究結果が明らかになった。
医学雑誌の「Nutrition and Metabolism」によると、この食事療法によって薬の減量や離脱に至った患者も多いという。
炭水化物の制限は糖尿病食において最も重要なポイントである。炭水化物を極端に制限すると、体はタンパク質をエネルギー源とし、それによってケトン体が産生されるために、ケトン体ダイエットと呼ばれる。もう一つの方法は、血糖値の上昇が緩やかな低GI食品を用いた、カロリー制限食である。
デューク大学メディカルセンターのエリック・ウェストマン博士の研究グループは、これら二つの食事法の効果を比較した。被験者となった84名は肥満のある2型糖尿病患者。患者らは「1日20g以下の低炭水化物食」と「低GIによるカロリー制限食」の2つのグループにランダムに振り分けられ、24週(約6か月)にわたって実験が行われた。低炭水化物グループにはカロリー制限はない。
低炭水化物食グループは、血糖値の長期コントロールを示すヘモグロビンA1c値において、カロリー制限グループより大きな改善が見られた。
低炭水化物グループは、体重の減少と善玉のHDLコレステロールの増加においても、改善効果が高かった。
また、低炭水化物グループでは95.2%が薬の減量や離脱ができたのに対して、カロリー制限グループでは62.1%であった。
低炭水化物食による生活様式の改善は、2型糖尿病の改善に効果がある、と研究グループは結論付けている。
アメリカあたりでは、糖尿病患者が炭水化物の量をコントロールするというのは、もはや議論の余地のない大前提であり、そのコントロールをどういう方法でどの程度までやるか、というところに論点が移っているような気がします。
炭水化物のコントロール法の一つは、食品のGI値に気をつけながら全体にカロリーを控えるというもの。もう一つはカロリーのことは考えずに、炭水化物だけをできるだけ控えるというもの。今回はこの二つの方法を比較したもののようです。
この実験で行われた低炭水化物食は1日20g以下というかなり極端な炭水化物制限です。また、カロリー制限は体重の維持に必要なカロリーより500kcal低い値に設定したようです。私自身に当てはまると1日1300〜1500kcalといったところでしょうか。
1日20gのカーボか、1日1300kcalのカロリーか。どっちも辛いところですが、これはあくまで体重を落とし、血糖値も改善しようという食事法。半年間、これでしのいで体重と血糖値が安定したら、1日1800kcal、カーボ150g程度のゆるゆる食事制限で大丈夫です。あくまで私の場合ですが。
アメリカ糖尿病協会の記事
Nutrition and Metabolismの記事
ローファットかローカーボか
低炭水化物食、地中海食、低脂肪食のダイエット効果に関するイスラエルの研究結果を、最近いろんなところで目にします。日本語の記事では「3種類とも大きな違いはない」、「これからはローカーボもOK!」みたいな論調が多かったけど、オリジナルの記事に目を通してみたところ、糖尿病患者にとっては見逃せない結果もいろいろあったのでここに取り上げてみました。
イスラエルのベングリオン大学とアメリカのハーバード大学が共同して行ったこの研究、2年という長い歳月に渡って経過を観察した点と、職場ぐるみでしかも社員食堂と連動することで84%という高い継続率を維持できたことがデータの信頼性を高めています。
実験の詳細は以下の通りです。
【実験方法】
実験期間は2005年の7月から2007年の7月までの2年間。
場所はイスラエルのディモーナにある、某リサーチセンターの職場。
実験の対象となったのはBMI27以上の肥満があるか、BMIに関係なく糖尿病あるいは冠状動脈疾患がある322人(平均年齢:52歳、平均BMI:31、男性比率:86%)。
被験者は「カロリー制限のある低脂肪食」、「カロリー制限のある地中海食」、「カロリー制限のない低炭水化物食」の3種類の食事法にランダムに割り振られました。
●低脂肪食
アメリカ心臓病協会のガイドラインに基づいたカロリー制限のある低脂肪食。
摂取カロリーは女性で1500kcal、男性で1800kcal。カロリーの30%を脂肪から摂り、飽和脂肪酸の割合は10%、1日のコレステロール摂取は300mg。
脂質の摂取を制限するために脂肪分の少ない穀物や野菜、果物、豆を豊富に摂るよう指示されます。
(※低脂肪とは言いながら脂質30%は日本の糖尿病食より高脂肪・低炭水化物となっています)
●地中海食
適度な脂肪を摂取し、カロリー制限も行う。食材は野菜が豊富で赤身の肉は少ない。ビーフやラムの替わりにチキンや魚を用いる。女性には1500kcla、男性には1800kcalのカロリー制限を行う。脂質の割合は35%を超えない。主要な脂肪源は1日30〜45gのオリーブオイルと一握りのナッツ。ウィレット&スクレットの提言に基づく食事法。
●低炭水化物食
炭水化物の摂取を抑えるだけで、カロリー制限はない。導入期となる最初の2ヶ月は1日20gの炭水化物を摂取。その後、減量を維持しながら徐々に最大1日120gまで炭水化物を増やす。カロリー、脂肪、たんぱく質の制限はないが、できるだけ植物由来の脂肪やたんぱく質を摂るようにし、トランス脂肪酸は避ける。アトキンスダイエットを基にした食事法。
【実験結果】
●全体の体重変化
低脂肪食:−2.9kg
地中海食:−4.4kg
低炭水化物食:−4.7kg
減量効果の最も高かったのが低炭水化物食。どうやら、脂肪を制限するより炭水化物を制限する方が痩せやすいようです。地中海式にはリバウンドがほとんどありません。
●女性の体重変化
低脂肪食:−0.1kg
地中海食:−6.2kg
低炭水化物食:−2.4kg
興味深いのは女性の減量結果。低脂肪でも低炭水化物でもない、地中海食がダントツに減量効果がありました。
●HDLコレステロール
低脂肪食:+6.3
地中海食:+6.4
低炭水化物食:+8.4
HDLコレステロールはどの方式も増えていますが、低炭水化物の増え方が一番多いです。
●中性脂肪
低脂肪食:−2.8
地中海食:−21.8
低炭水化物食:−23.7
減量効果もあってか、すべての食事法で中性脂肪は下がっていますが、地中海食と低炭水化物食でその効果が低脂肪食のそれを大きく上回っています。
●LDLコレステロール
低脂肪食:−0.05
地中海食:−5.6
低炭水化物食:−3.0
最初の6ヶ月で低炭水化物食のLDLコレステロールが増えていますが、これは導入機の超低炭水化物によるものでしょう。2年後のデータは低脂肪食を下回っています。
●総コレステロール/HDLコレステロール比
低脂肪食:−0.6
地中海食:−0.9
低炭水化物食:−1.1
実はこの数値がコレステロール管理では一番大事。低炭水化物食が一番いい結果になっています。
●アディポネクチン
低脂肪食:+0.8
地中海食:+0.8
低炭水化物食:+1.3
脂肪細胞から分泌される物質で、インスリン感受性を高めるなど、メタボリックシンドロームの抑止効果があるといわれています。これも低炭水化物食で最も増えています。
●空腹時血糖値(糖尿病患者)
低脂肪食:+12.1
地中海食:−32.8
低炭水化物食:+1.2
糖尿病患者で見る限り、低脂肪食で12mg/dl上がり、地中海食で32mg/dl下がっています。低炭水化物食は1年目まで順調に下がったものの2年目で2年目でなぜか上昇しています。
●空腹時インスリン(糖尿病患者)
低脂肪食:−1.5
地中海食:−4.0
低炭水化物食:−2.2
地中海食が空腹時のインスリン分泌を最も減らしました。インスリンの分泌が悪くなったというより、分泌の必要がなくなったということでしょう。いわば高インスリン血症の改善。
●HOMA-IR(糖尿病患者)
低脂肪食:−0.3
地中海食:−2.3
低炭水化物食:−1.0
インスリン抵抗性を示す数値。これは地中海食が最も好結果。
●ヘモグロビンA1c(糖尿病患者)
低脂肪食:−0.4
地中海食:−0.5
低炭水化物食:−0.9
空腹血糖値を最も下げたのは地中海式でしたが、ヘモグロビンA1cを最も下げたのは低炭水化物食。やはり食後の高血糖が抑えられるからでしょうか。
●肝臓ALT(GPT)
低脂肪食:(有意な変化なし)
地中海食:−3.4
低炭水化物食:−2.6
この数値が高いと脂肪肝ということになります。糖尿病患者はインスリンの効きが悪く、ブドウ糖の多くを肝臓で処理するため、肝臓に中性脂肪がたまりやすいのですが、これも地中海食、低炭水化物食で改善しています。
ローファットかローカーボかという比較でいえば、糖尿病患者が気になるほとんどすべての面でローカーボ(低炭水化物食)に軍配が上がっています。「脂肪を減らすカロリー制限食」にほとんど何の優位性もないことがこれでますますはっきりしましたね。
あと、ローカーボは無理という人でも、地中海食がかなり有効なことがこの研究からわかります。地中海食の定義は難しいのですが、今回の実験方法やアメリカ糖尿病協会のガイドラインなどを総合すると、
・炭水化物と一価不飽和脂肪酸(オリーブ油、キャノーラ油、ナッツ等)でカロリーの60〜70%を摂る。
・炭水化物は全粒穀物、果物、野菜、豆、低脂肪乳などから摂る。
・ビーフやラムなどの赤味の肉ではなく、チキンや魚介類などを多く摂る。
というもの。
この原則に従うなら、なにもイタリアや南仏料理じゃなくても、和風の味付けで構わないわけですよね。「地中海式和食レシピ」、誰か考えてみませんか?
Weight Loss with a Low-Carbohydrate, Mediterranean, or Low-Fat Diet
糖尿病食の歴史
糖尿病というのは消化吸収されたブドウ糖の処理がうまくいかなくなる病気です。ブドウ糖の元になるのは炭水化物ですから、その炭水化物の摂取に慎重になるのは当然のことなのですが、日本のお医者さんの多くはカロリー制限一辺倒で、炭水化物についてはほとんど言及しません。
日本の糖尿病患者の食事療法は「食品交換表」を基準にしているため、糖尿病患者は基本的にカロリーの60%を炭水化物から摂取することになります。これは、今の日本人の食生活においては、むしろ高炭水化物食といっていいレベルです。
なぜこのような理不尽がまかり通っているのか、その謎を解き明かしてくれる文章を見つけたのでここに引用したいと思います。
出典は『糖尿病・最初の一年』(グレッチェン・ベッカー 著、 太田 喜義 訳))です。翻訳独特のわかりにくい文章表現だったので私なりに推敲してあります。
糖尿病患者はインスリンが十分作れないために、血糖値を正常に保つことができません。とくに炭水化物を摂ったときにその傾向は顕著です。にもかかわらず、なぜ多くの医師や栄養士は「たくさんの炭水化物を摂れ」と指示するのでしょうか。なぜアメリカ糖尿病協会(ADA)は「炭水化物は最高の栄養素」と言うのでしょうか。
この疑問に答えるためには、糖尿病食の歴史について学ばなければなりません。
まだ誰も糖尿病の原因が何なのかが解らなかった時代、糖尿病患者には大量の炭水化物が与えられました。大量の糖が尿から失われるのだから、大量の糖を補給する必要があると考えたのです。
インスリンが発見される直前の1900年代初頭は、超低炭水化物食が糖尿病患者の標準食でした。この食事で2型糖尿病患者の血糖値は低く保たれ、1型糖尿病患者の命を多少は長引かせることができました。
1920年代になってインスリンが発見されると、多くの糖尿病患者は正常に近い生活ができるようになったものの、彼らの標準食は依然として低炭水化物・高脂肪食でした。
インスリンのおかげで1型糖尿病の子供たちは大人まで成長することが可能になりましたが、彼らの多くは比較的若い年齢で心臓病により亡くなっていました。
1950年代、心臓病の発症は飽和脂肪を多く摂る人に顕著だという研究結果が発表されると、糖尿病患者に心臓死が多いのは、脂肪の多い食事のせいだと考えられるようになりました。
1979年、アメリカでは1型糖尿病患者の食事から脂肪を減らし、炭水化物を55〜60%にまで増やすことが決定されました。増えた炭水化物による血糖値の上昇は、インスリンを増やすことで対応しました。
1988年、2型糖尿病患者に対しても同じような勧告がなされました。この時期、繊維質に富んだ高炭水化物食はインスリン抵抗性を下げ、食後の血糖値を安定させる効果が高いという研究結果が出されたからです。
インスリンを使わない2型患者にとって、炭水化物の増加は血糖値の増加を意味しますが、その当時、食後の一時的な高血糖は無害だと考えられていました。
しかし1994年、アメリカ糖尿病協会は高炭水化物食がすべての2型糖尿病患者に対してベストなものではなかったことを認め、炭水化物の一部を1価不飽和脂肪で置き換える食事療法を導入しました。炭水化物をどのくらい減らすかは個々の状況によるとし、適切な炭水化物量を探る方法として、カーボカウンティングが取り入れられました。
このような変化にも関わらず、今なお患者に大量の炭水化物摂取を勧める医師や栄養士は数多くいます。
高炭水化物食に移行するきっかけとなった研究は、本来、多くの繊維質をとるための炭水化物食であったはずなのに、いつの間にかパンや米やシリアルが糖尿病にいいものという誤解を与えてしまいました。
また、大量の脂肪摂取が心臓死を招くとする研究も、厳密にいえば大量の飽和脂肪なのです。オリーブ油(1価不飽和脂肪)をたっぷり摂るギリシャでの心臓死は決して多くありません。また、大量の飽和脂肪を摂る集団は、大量の炭水化物を摂る集団であることも忘れてはいけません。
このように、本来は「高繊維&低飽和脂肪」がベストな食事だったはずが、いつのまにか「高炭水化物&低脂肪」がいいというように勘違いされてしまったのです。
最近の研究では、食後2時間の血糖値が、将来起こる様々な問題の最も正しい指標であることが明らかになっています。血糖値の低い人たちの心臓死のリスクは低いのです。食後高血糖は問題ではないと言われた時代は終わりました。
もしあなたがインスリンを打っているなら、どんなに炭水化物を摂ってもそれに見合うインスリンを打てば問題ないと思うかもしれません。しかし、健康なすい臓が行う微妙な血糖コントロールを、インスリン注射で真似することは非常に困難です。炭水化物の量が増えれば増えるほど血糖値の上下は激しくなりますが、炭水化物を控えれば山と谷は平らになります。
糖尿病食の流行は振り子のように揺れ動いています。ちょっと前まで、多くの医師は60%から、場合によっては70%もの炭水化物を推奨しました。しかし今、振り子は反対側へ揺り戻しています。ボストンのジョスリン糖尿病センターは最近、炭水化物の推奨量を40%に下げました。さらに多くの医師や栄養士は、より低い炭水化物を処方する傾向にあります。
私たちはすべて、それぞれ固有の生理学を持っています。2型糖尿病患者の多くは、炭水化物を減らすことで血糖をうまくコントロールしていますが、中にはどんな脂肪もだめで、高繊維&低脂肪食が一番いいという人もいます。
重要なのは、何があなたに効くのかを発見することです。ある食事法がどういう結果をもたらすのか、血糖値はもちろん、血中脂質や血圧などを測定しながら検証することです。
食事を楽しみ、健康に生きましょう。
現在の日本の糖尿病食は今から20年前のアメリカのやり方を真似た物だったのです。そのアメリカでは14年前に、それがベストなやり方ではなかったことを認めています。
確かに総カロリーも重要です。しかし、糖尿病患者にとって栄養素のバランスはそれ以上に重要で、どれがベストなバランスなのかは個人個人の体質や病状、生活習慣によって違ってくるということを、日本の医療はなぜ認めようとしないのでしょう。
食品交換表というお仕着せをすべての患者に一律に適用するのではなく、医師と栄養士と患者がチームを組んで、それぞれの患者にもっともふさわしい食事を探って行ける日が、一日も早く来ることを願ってやみません。
コーヒーって糖尿病にいいの?悪いの?
これまで、コーヒーは糖尿病にいいものだと思っていました。根拠はADA(アメリカ糖尿病協会)のサイトで読んだこの記事だと思います。
概要を説明すると、フィンランドで行われた35歳から74歳までの男女2万人あまりの調査によると、1日に2杯以下しかコーヒーを飲まない人に比べて、3〜6杯飲む人は糖尿病の発症率が23%も低く、7杯以上飲む人にいたっては34%も低いということです。
この調査はあくまで糖尿病のない人を対象に行われたものですが、コーヒーを飲むと糖尿病になりにくいということは、糖尿病患者にもいいに違いないと思っていました。もちろん、理由は糖尿病だけではないですが、私なんか多い日で1日5杯くらいコーヒーを飲んでます。
ところが最近、同じADAのサイトで、コーヒーに関する別の記事を読みました。
タイトルは「コーヒーは糖尿病患者の血糖値を上げる」というものです。
アメリカ・ノースカロライナ州のデューク医療センターでは、平均63歳の糖尿病患者10人に、72時間連続して血糖値が測れる装置を装着。患者にコーヒー4杯分に相当するカフェインの錠剤を飲ませたところ、偽の錠剤を飲ませた日と比べて、1日の平均血糖値は8%も上昇したというのです。
研究者は2つの可能性を指摘しています。ひとつは、カフェインが筋肉や脂肪細胞への糖の取り込みを阻害するのではないかということ。もうひとつは、カフェインが血糖上昇ホルモンであるアドレナリンの放出を促すのではないかということです。
平均血糖値が8%上昇するということは、120mg/dlが130mg/dlになるということです。これをヘモグロビンA1cに換算すると6.0%から6.2%に上昇するということです。
1日4杯飲んでも0.2%ならいいやと思うか、コーヒーを一切断てば0.2%下がると考えるか。私は前者かな。
【追記】
元祖の「Dabetes Care」には論文の全文は見れなかったのですが、こちらに実験の詳細がありました。
それによると、被験者たちは、朝食には全員同じ栄養素のドリンクを飲み、昼食と夕食は好きなものを食べたそうです。
で、血糖値の平均では8%の上昇が見られたのですが、食後の血糖値を見ると、朝食後が9%、昼食後が15%、夕食後は26%上昇したとあります。
同じものを食べた朝食後でも9%上昇しているので、カフェイン自体の影響もあるのでしょうが、自由に食べてよい昼食や夕食でより上昇率が高いというのは、カフェインには食欲増進効果はないのかまで調べたほうがいいかもしれません。
いずれにしても、夕食時で26%上昇するとなると、本来160mg/dlで済むものが、コーヒーのせいで200mg/dlを超えるのですから、影響はかなり大きいです。追試を待ちたいですね。というか、自分で実験すればいいんでしょうが。
アルコールは血糖値を下げる
日本の糖尿病治療では、酒は原則禁止となっているようです。まあ、日本の医療というのは糖尿病患者に対して聖人君子の生活態度を求めるようなところがって、確たるエビデンスもないまま、体に悪そうなものはとりあえず禁止しておこうという傾向があるように思います。
私自身、普段あまり酒を飲むほうではありませんが、たまに付き合いで飲んだとき、血糖値を測ってみると意外なほど低くてビックリすることがあります。
どうやら、肝臓がアルコールの処理に追われて、糖の新生を怠るのがその理由らしいです。しこたま飲んだ後、最後にラーメンやお茶漬けが欲しくなるのは、飲酒による低血糖を補うためという話もあります。
このようにアルコールが一時的な低血糖を起こすことは、医学的には常識のようですが、果たして長期的な血糖コントロールにどう影響を及ぼすかについては、あまりエビデンスはないようです。
そんな折、アメリカ糖尿病協会のサイトに、面白い研究結果を見つけました。飲酒習慣は2型糖尿病患者の、空腹時血糖値を下げるというものです。
109人の2型糖尿病患者を2つのグループに分け、片方のグループには夕食の際に150mlのワインを、もう片方のグループにはノンアルコールのビールを飲んでもらいました。
3ヶ月の実験の結果、ワインのグループは平均の空腹時血糖値が139.6mg/dlから118.0mg/dlにまで下がったのに比べて、ノンアルコールビールのグループは、136.7mg/dlから138.6 mg/dlと、ほとんど変化は見られませんでした。
特に、ヘモグロビンA1cの高い人ほど空腹時血糖値の低下は著しく、元々A1cの低かった人にはそれほど効果はありませんでした。また、食後の血糖値には影響を与えませんでした。
研究者は注意すべき点として、アルコールはあくまで適量であるということ、また、ワインの分として食事から100kcalを差し引くことを挙げています。
私自身、一時は100前後にまで下がった起床時の血糖値も、最近はまた110前後にまで上昇して来ました。夕食時のワイン150ml作戦、とりあえず3ヶ月試してみようと思います。
Alcohol Intake May Lower Blood Sugar











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